【完全解説】みなし残業とは?固定残業代との違い・計算方法・違法ケースまで徹底解説

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「みなし残業とは何か」「固定残業代とはどう違うのか」「みなし残業は違法ではないのか」。求人票や雇用契約書でよく目にする言葉ですが、仕組みをきちんと理解している人は意外と少ないかもしれません。

たとえば「月30時間の残業代込み」「残業45時間まで固定残業代」といった記載を見たとき、実際に残業をしなくても給与は同じなのか、もし残業が設定時間を超えた場合には追加で支払われるのか、それとも違法な契約なのかと、不安や疑問を抱く方も多いでしょう。

本記事では、みなし残業や固定残業代の基本的な意味や仕組みから、計算方法の具体例、制度を導入することで生じるメリットやデメリット、そして労働基準法に照らして違法となるケースまでをわかりやすく解説します。さらに、給与明細や雇用契約書で確認しておくべき注意点も取り上げていきます。

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みなし残業とは?(みなし残業の意味と仕組み)

みなしとは?みなし残業・見込み残業の意味

「みなし」とは、「実際にそうでなくても、そうであるとみなす」という意味の言葉です。したがって「みなし残業」とは、「実際の残業時間に関係なく、一定時間働いたとみなして賃金を払う」という考え方に基づいています。

「みなし残業」とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度のことです。たとえば「月給30万円(みなし残業30時間含む)」という表記があれば、その30万円の中に「30時間分の残業代」が含まれているという意味になります。

実際に残業が30時間を超えた場合は、超過分の残業代を別途支払う必要があります。逆に、残業が30時間に満たない場合でも、30時間分の残業代が支払われる仕組みです。

なお、「見込み残業」という言葉もよく使われますが、法律上の正式な用語は「みなし残業(固定残業代)」です。「見込み残業」は企業側が採用時などにわかりやすく説明するための俗称に過ぎません。

みなし残業と見込み残業の違い

実質的な違いはありません。どちらも「給与にあらかじめ一定時間分の残業代を含めて支払う」仕組みを指します。ただし、法的な用語として有効なのは『みなし残業(固定残業代)』のみです。

企業が求人票などで「見込み残業◯時間含む」と表記する場合でも、実際には「固定残業代制度」として労働契約上の明確な取り決めが必要です。

固定残業代とは?固定残業との違い

「固定残業代」は、みなし残業制度の正式な法的名称です。企業は以下の3点を労働契約書に明示する必要があります。

  1. 固定残業代として支払う金額
  2. その金額に対応する残業時間数(例:30時間分)
  3. 基本給と固定残業代の内訳

これらを明確に記載せずに「みなし残業込み」としている場合、実際には違法(サービス残業の扱い)になるおそれがあります。

サービス残業(サビ残)とは?みなし残業との関係

「サービス残業(サビ残)」とは、残業をしても残業代が支払われない違法な状態を指します。

一見似ているように思えますが、「みなし残業」はあくまで事前に定めた残業時間分の賃金を支払う制度であり、労使合意のもとで正しく運用されていれば合法です。

ただし、みなし残業制度を導入していても、

  • 実際の残業時間がみなし時間を超えているのに追加支給がない
  • 契約書に固定残業代の明細が記載されていない

といった場合には、サービス残業と同じく労働基準法違反に該当します。

裁量労働制とみなし残業の違い

「裁量労働制」も「みなし」という言葉が使われるため混同されがちですが、まったく異なる制度です。

制度名

対象

残業代

主な特徴

みなし残業(固定残業代)

一般社員も可

原則として支給

あらかじめ定めた時間分の残業代を支給

裁量労働制

専門職・企画職など限定

原則なし(一定の裁量労働時間で計算)

実働時間に関係なく「みなし労働時間」で賃金を計算

裁量労働制では、たとえ長時間働いても、「1日8時間働いたとみなす」ため残業代は発生しません。これに対し、みなし残業制はあくまで残業代を前払いしている仕組みであり、超過分には追加支払いが必要です。

変形労働時間制との違い

「変形労働時間制」と「みなし残業制」は、どちらも労働時間に関係する制度ですが、目的と仕組みがまったく異なります。

変形労働時間制とは、1日8時間・週40時間という法定労働時間の枠を、一定の期間で平均して調整できる制度のことです。たとえば、繁忙期は1日10時間、閑散期は6時間にするなど、業務量の波に応じて労働時間を柔軟に配分できます。

一方、みなし残業制は「労働時間の調整制度」ではなく、賃金の支払い方に関する制度です。つまり、実際の勤務時間をどう設定するかではなく、「残業代をどのように支払うか」を決める仕組みになります。

項目

変形労働時間制

みなし残業制

目的

労働時間の柔軟な配分

残業代の支払い方法

法的性質

労働時間制度

賃金制度

適用対象

全従業員が対象可能

主に固定給制の社員

超過勤務の扱い

平均して法定時間を超えた分のみ残業扱い

みなし時間を超えた分は追加支給

したがって、変形労働時間制を導入していても、みなし残業制度を併用することは可能です。

ただし、その場合は「みなし時間」と「変形による実働時間」を明確に分けて管理しなければなりません。

フレックスタイム制との違い

「フレックスタイム制」は、労働者が自分で始業・終業時刻を決められる制度です。コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)とフレキシブルタイム(自由に勤務できる時間帯)を設定し、月単位などの総労働時間の範囲で働く柔軟な仕組みです。

一方のみなし残業制は、「時間の自由」ではなく「賃金の計算」に関わる制度となります。勤務時間が自由でも、給与の中にあらかじめ残業代が含まれているかどうかとは関係がありません。

項目

フレックスタイム制

みなし残業制

概要

労働者が出退勤時間を選べる制度

あらかじめ一定時間分の残業代を含めて支払う制度

主な目的

働き方の柔軟化

賃金の明確化・固定化

超過労働

清算期間内で超過すれば残業扱い

みなし時間を超えた分のみ残業扱い

運用のポイント

総労働時間の精密管理が必要

残業代の内訳・時間数を明示する必要あり

つまり、フレックスタイム制は働く「時間の自由」、みなし残業制は給与に含める「残業代の考え方」という違いがあります。

年俸制との関係

「年俸制」と「みなし残業制」も、しばしば混同されますが、両者は独立した概念です。

年俸制は、1年分の給与をあらかじめ決めて支払う制度であり、支給方法(例:12分割・14分割など)は企業によって異なります。年俸の中に残業代を含める場合は、その金額や時間数を明示しなければ違法になる可能性があります。

たとえば「年俸600万円(みなし残業45時間含む)」と明記されていれば問題ありませんが、単に「年俸600万円・残業代込み」とだけ記載している場合、どのくらいの残業時間に相当するのかが不明確であり、労働基準法第37条違反に問われるおそれがあります。

項目

年俸制

みなし残業制

概要

年間の給与総額を定めて分割支給

一定時間分の残業代を固定支給

関連法令

労働契約法・賃金支払の原則

労働基準法第37条

注意点

残業代込みの場合は時間数と金額の明示が必要

超過分の残業代を追加支給しなければ違法

つまり、「年俸制+みなし残業」は併用可能ですが、年俸額の中にどの程度の残業代が含まれているかを明確に示すことが不可欠です。

みなし残業は結局あった方が良いのか?

みなし残業制度があるからといって、一概に悪いとは言えません。制度が適正に運用されていれば、安定した収入や評価制度の明確化につながる場合もあります。

年度初め(4〜5月)や下期開始(9〜10月)は、給与体系の改定時期で求人票の条件も正確になりやすく、転職活動に適したタイミングです。

面接では必ず「みなし残業○時間分」「超過分の支払い有無」「評価制度への反映方法」を確認し、納得できる条件かをチェックしましょう。

固定残業代・みなし残業の関係

「固定残業代」と「みなし残業」は、実はほぼ同じ意味を持つ制度です。どちらも、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う仕組みを指します。ただし、法律上の正式な用語は「固定残業代」であり、「みなし残業」は俗称的な表現です。

求人票や雇用契約書などでは、「みなし残業〇時間を含む」と記載されることが多く、

企業・求職者の双方で混同されやすいポイントでもあります。

固定残業代とは?(固定残業手当の仕組み)

固定残業代(固定残業手当)とは、実際の残業時間に関わらず、あらかじめ定めた時間分の残業代を固定的に支払う制度です。

例えば、以下のような給与体系の場合:月給30万円(うち固定残業代5万円/30時間分を含む)

この場合、30万円の中には「30時間分の残業代5万円」が含まれており、実際に残業が30時間を超えた場合には、その超過分の残業代を別途支払う必要があります。逆に、残業が30時間未満であっても、固定残業代5万円は支払われます。

このように、固定残業代制度には以下のような特徴があります。

項目

内容

対象

主に正社員・総合職など

支給内容

月給の中に一定時間分の残業代を組み込む

超過残業

規定時間を超えた分は別途支給義務あり

根拠法令

労働基準法第37条(時間外労働の割増賃金)

固定残業代とみなし残業代の違い

結論から言うと、「固定残業代」と「みなし残業代」に法的な違いはありません。どちらも同じ「固定残業代制度」を指しており、呼び方の違いだけです。

「固定残業代」…法律上の正式な用語(行政文書・労働契約書などで使用)

「みなし残業代」…一般的に使われる呼称(求人票・採用サイトなど)

ただし、注意すべきは「裁量労働制における“みなし労働時間”」とはまったく別物という点です。「みなし残業代」は“給与制度”であり、「みなし労働時間制」は“労働時間制度”なので混同してはいけません。

固定残業代は基本給に含むべきか?

固定残業代は基本給とは明確に分けて設定する必要があります。労働基準法では、固定残業代を適法に導入するために、以下の3点を明示することが求められています。

  1. 固定残業代として支払う金額
  2. その金額に対応する残業時間数(例:30時間分)
  3. 基本給と固定残業代の内訳

これらが明確でないまま「月給30万円(残業代込み)」とだけ記載している場合、どこまでが基本給でどこまでが残業代かが不明瞭となり、裁判などでは“全額が基本給”と判断されるケースもあります。

その結果、実際の残業に対して追加で全額の残業代を支払う義務が発生することもあるため、契約書や就業規則での内訳明示は非常に重要です。

固定残業代なしのケース・業務手当や職務手当での運用

企業によっては、「固定残業代制度を導入しない」ケースもあります。この場合、実際に発生した残業時間に応じて都度残業代を支払う、もっともシンプルで透明性の高い方式です。

一方で、固定残業代の代わりに「業務手当」や「職務手当」を設けている企業もあります。ただし、これらの手当の中に実質的に残業代が含まれている場合、名称が「業務手当」「役職手当」であっても固定残業代とみなされることがあります。

つまり、呼び方が違っても、「一定時間分の残業代をあらかじめ支払う」という性質があれば、それは実質的に「固定残業代」と同じ扱いです。

みなし残業・固定残業代の計算方法

みなし残業代の計算方法

みなし残業代(固定残業代)は、「実際に働いた時間」ではなく、あらかじめ定めた一定時間分の残業代を給与に含めて支払う仕組みです。そのため、計算の際は「想定残業時間数」と「時間外割増率」をもとに算出します。

計算式は以下の通りです。

みなし残業代 =(基本給 ÷ 所定労働時間) × 1.25 × 想定残業時間

※1.25は、法定の時間外労働に対する割増率(25%)を示します。

※深夜(22時~5時)は1.5倍、休日出勤は1.35倍など、条件に応じて変化します。

たとえば、

基本給:25万円

所定労働時間:月160時間

想定残業時間:30時間

の場合、

25万円 ÷ 160h × 1.25 × 30h = 約5万8,600円

この5万8,600円が、給与内に含める「みなし残業代」となります。

固定残業代の計算方法

固定残業代の考え方も、みなし残業代と同様です。つまり「固定的に支払う残業手当を、基礎となる時間単価 × 割増率 × 想定残業時間」で求めます。

計算式は次の通りです。

固定残業代 =(基本給 ÷ 所定労働時間) × 割増率 × 固定残業時間

固定残業時間は一般的に「20~45時間程度」で設定されます。

この範囲を超えると、超過分は別途支給が必要になります。

例:月給30万円(うち固定残業30時間分含む)

固定残業30時間を超えて働いた場合は、31時間目以降の残業代を追加で支払う義務があります。

月20時間残業/月30時間残業/月45時間残業の給与例

以下は、基本給25万円/所定労働時間160時間/時間外割増率1.25の場合の例です。

想定残業時間

みなし・固定残業代

総支給額(月給)

20時間

約39,000円

289,000円

30時間

約58,600円

308,600円

40時間

約87,900円

337,900円

※上記は概算。実際には深夜・休日残業の有無や各種手当によって変動します。

※企業はこの想定残業時間を超えた場合、追加支給をしなければ労基法違反となるため注意が必要です。

36協定とは

「36協定」とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業や休日労働を行う場合に必要な労使協定のことです。労働基準法第36条に基づくため、「サブロク協定」と呼ばれています。

企業はこの協定を労働者代表と締結し、労働基準監督署に届出することで、はじめて時間外労働が可能になります。届出がないまま残業を命じると、違法残業(サービス残業)として罰則の対象になります。

また、働き方改革以降は「月45時間・年360時間」が原則上限となり、それを超える場合には「特別条項付き36協定」を別途締結する必要があります。

明らかに残業代が支払われない、または固定残業時間を超えて働かされている場合は、労働基準監督署への相談のほか、法テラスや労働相談センターなどの無料相談窓口を活用できます。「みなし残業制度の悪用」は違法となる可能性があり、法的救済の手段を確認しておくと安心です。

特別条項付き36協定の場合の上限について

36協定の原則上限は「月45時間・年360時間」です。しかし、繁忙期や突発的な業務対応など、やむを得ずこの上限を超える場合には「特別条項付き36協定」を締結することで、一時的に延長が認められます。

ただし、特別条項を結んだからといって無制限に残業できるわけではなく、以下の法定上限を厳守する必要があります(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」)。

  • 年間720時間以内
  • 単月100時間未満(休日労働を含む)
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 月45時間超の残業は年6回まで

これらは「過労死ライン」を超えないようにするための安全基準であり、違反が発覚した場合は企業に対して是正勧告や罰則が科されることもあります。

また、2024年4月からは建設業・運送業にも上限規制が適用されました。

建設業では災害復旧などを除き年720時間、運送業では特例として年960時間が上限とされています。

労働時間のルールは業界や契約形態によっても異なるため、厚生労働省の公式資料や労働基準監督署、専門家の相談窓口で確認しておくことが大切です。

基本給+残業代の考え方(基本給30万の残業代計算例)

ここでは、固定残業代を含まないケースでの残業代の計算方法を見てみましょう。

【条件】

基本給:30万円

所定労働時間:160時間

残業時間:20時間

時間外割増率:25%

計算式は以下の通りです。

残業代 =(30万円 ÷ 160h)× 1.25 × 20h= 約46,875円

よって、総支給額は

30万円 + 46,875円 = 346,875円

となります。固定残業代制度を導入していない場合、企業はこのように実際の残業時間に応じて支払う必要があります。

実務運用のポイント

固定残業制・みなし残業制を導入する場合でも、労働時間の実態把握は欠かせません。制度があっても、労働時間管理を怠れば「サービス残業」と見なされるリスクがあるため、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

労働時間管理の方法

労働時間は、出退勤時刻の記録をもとに正確に把握することが原則です。上司の申告や自己申告だけでは不十分であり、客観的な記録(タイムカード・勤怠システムなど)が求められます。また、リモートワークや営業職の場合も、「業務開始・終了報告」などの手段で勤務時間を残す必要があります。

タイムカード管理

タイムカードは最も基本的な労働時間の証拠です。

  • 打刻漏れや修正の有無
  • 上長承認のフロー
  • 休憩時間の実施確認

といった点を明確にしておくことが重要です。不正修正や後付け記録は、労使トラブルの大きな火種になります。

勤怠管理システムの活用

近年では、クラウド型の勤怠管理システムを導入する企業が増えています。これにより、以下のような利点が得られます。

  • 出退勤・休憩・残業申請を一元管理
  • 集計ミスや改ざんリスクを防止
  • テレワークや出張時の打刻にも対応
  • 36協定の超過リスクをリアルタイムで検知

中小企業でも導入コストが下がっており、法令遵守と労務効率化を両立する有効な手段です。

証拠収集の方法

労働時間トラブルが発生した場合、従業員・企業双方にとって「証拠」が決め手になります。以下のような資料が、客観的な証拠として有効です。

  • タイムカード・勤怠ログ
  • メール送受信履歴(送信時刻)
  • 社内システムのログイン・ログアウト記録
  • 日報・スケジュール管理ツールの履歴

これらを定期的に保存・保全しておくことで、万一の紛争リスクを回避できます。

みなし残業のメリット・デメリット

みなし残業制度(固定残業代制度)は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う仕組みです。企業にとっては給与設計の明確化につながる一方で、労働者にとっては「実働時間と報酬が一致しにくい」側面もあります。

ここでは、みなし残業・固定残業それぞれのメリット・デメリットを比較し、さらに「残業しない場合」や「ホワイト/ブラック企業の傾向」についても解説します。

みなし残業のメリットとデメリット比較

みなし残業制度の利点とリスクを、企業と従業員の双方の観点で整理すると以下の通りです。

観点

メリット

デメリット

企業側

・給与体系をシンプルにできる
・人件費を予算化しやすい
・残業代の計算・申請業務を軽減できる

・実際の残業時間を把握しづらくなる
・超過分を支払わないと法的リスクあり
・制度の誤運用で「ブラック」と見なされる可能性

従業員側

・残業が少なくても固定額が支払われる
・月収が安定しやすい
・転職時に収入の目安をつけやすい

・実際の残業が多いと「未払い残業」となることも
・働いた時間と報酬が比例しない
・「残業込み給与」が本来の基本給を低く見せるケースもある

みなし残業は「安定収入」「手当明示」という面で便利な制度ですが、実態に見合った残業管理と超過支給がなければ、労働基準法違反に繋がるリスクがあります。

固定残業代のメリットとデメリット比較

固定残業代制度は、みなし残業とほぼ同義ですが、法的に明文化された形式です。

導入目的は「給与の透明性向上」と「残業コストの管理」です。

観点

メリット

デメリット

企業側

・給与設計が明確で採用時に説明しやすい
・残業代の支払い範囲を事前に設定できる
・管理職・営業職などに導入しやすい

・契約書での明示義務が重い(時間数・金額・内訳)
・超過分未払いが法違反に直結
・誤解されると「サービス残業」と捉えられるリスク

従業員側

・想定残業時間までなら安定的に手当が支給される
・給与内訳が明確で交渉しやすい

・固定残業時間を超えると負担感が大きい
・残業が少ない月でも働き損に感じるケースあり
・実働が見合わないと「ブラック給与」に見えることも

固定残業代は「制度としては合法」ですが、透明性・説明責任・勤怠管理を欠くと、企業・従業員双方に不利益をもたらします。

残業しない場合のみなし残業・固定残業代はどうなる?

残業がゼロでも、みなし残業代・固定残業代は全額支給されます。

これは「残業代を固定支給する」という制度設計上の特徴です。

したがって、実際に残業をしていなくても、契約で定めた時間分の手当は支払われます。

ただし、注意すべき点として、

  • みなし残業分を基本給扱いしてしまう企業
  • 固定残業時間を超えても追加支給しない企業

このような場合、違法な運用(サービス残業)となり、監督署の是正指導や訴訟リスクに発展します。

みなし残業がブラック企業で多いケース

「みなし残業込みの高収入求人」には、注意が必要です。特に以下のようなケースは、ブラック企業に多く見られるパターンです。

  • 契約書に「残業代込み」としか書かれておらず、時間数が明示されていない
  • 超過残業に対する追加支払いがない
  • 実働が長いにもかかわらず勤怠管理がされていない
  • 管理職手当・職務手当の名目で残業代を事実上カットしている
  • 「成果報酬」「歩合給」で残業代を曖昧にしている

これらはいずれも労働基準法第37条違反に該当する可能性があり、実際には「みなし残業」という名の違法固定給与制度になっている場合があります。

みなし残業についてホワイト企業の特徴

一方、適正に制度を運用しているホワイト企業には、共通した特徴があります。

  • 契約書や求人票に、固定残業時間・金額・超過支給条件を明示している
  • 勤怠管理システムで実働時間を正確に記録・集計している
  • みなし残業時間を超えた分は必ず追加で支給している
  • 固定残業時間を過大に設定していない(例:20~30時間程度)
  • 残業削減の取り組みを行い、労働時間の透明性を確保している

このような企業では、みなし残業制度は「給与の安定+働き方の自由」を実現する仕組みとして機能しています。

みなし残業が違法になるケースとは?トラブル事例と注意点

みなし残業(固定残業代制度)は、適切に運用されれば合法な制度ですが、運用を誤ると労働基準法違反(違法残業・未払い残業)に該当します。ここでは、違法となるケース、よくあるトラブル、そして従業員が取れる対応策を解説します。

みなし残業が違法となるケース(労働基準法違反例)

みなし残業が違法になるのは、主に以下のような場合です。

違法となる主なケース

内容

契約書に固定残業代の「時間数・金額・内訳」が明記されていない

「月給30万円(残業代込み)」のように曖昧な表記はNG。労基法37条違反になる可能性

実際の残業がみなし時間を超えているのに追加支給がない

想定時間(例:30時間)を超過した分を支払わないと「未払い残業」扱い

タイムカード・勤怠記録がない

労働時間の客観的把握ができず、違法な「サービス残業」の温床に

深夜・休日残業を固定残業に含めている

深夜・休日割増は別途支給が必要。固定残業に含めるのは違法

業務手当・役職手当の名目で実質的に残業代を支払わない

名称を変えても「時間外労働分」を払っていないと違法と判断される

これらはいずれも、「みなし残業だから」と言い訳できないケースです。

制度の誤用・曖昧な契約内容が、違法運用の最大の原因になります。

みなし残業代が出ない・超過分が支払われない場合

本来、みなし残業代(固定残業代)は「定められた時間分」しかカバーできません。したがって、想定時間を超えた労働には必ず追加支給が必要です。

たとえば、

  • 「月30時間分の固定残業代」を支給している場合
  • 実際の残業が「月50時間」だった場合

超過分の20時間は、別途計算して支給しなければなりません。もし支給されていない場合、会社側が残業代の未払い状態となり、労働基準監督署から是正勧告を受けるリスクがあります。

36協定と残業上限(45時間・60時間ルール)

企業が従業員に残業をさせるためには、労働基準法第36条に基づく「36(サブロク)協定」が必要です。これを締結・届出していない状態で残業を命じることは、違法行為です。さらに、働き方改革法によって、次のような上限が設定されています。

区分

原則上限

特別条項付き36協定を締結した場合

月間残業時間

45時間以内

最長100時間未満(休日含む)

年間残業時間

360時間以内

最長720時間以内

これらを超える残業を命じると、みなし残業の有無に関わらず法令違反になります。

タイムカードがない会社の「みなし残業」問題

タイムカードや勤怠システムを導入していない企業では、「何時間働いたのか」が客観的に把握できず、違法リスクが非常に高いです。みなし残業制を採用していても、企業には以下の義務があります。

  • 実際の労働時間を客観的に記録・保存すること
  • 超過労働があれば追加支給すること
  • 労働時間管理方法を就業規則で定めること

これらを怠ると、「みなし残業=時間管理を放棄している制度」と見なされ、最終的に裁判で全残業代を請求されるケースもあります。

休日出勤・深夜残業はみなし残業に含まれるのか

原則として、休日出勤・深夜残業はみなし残業に含まれません。

  • 休日出勤:割増率35%以上
  • 深夜労働(22:00〜翌5:00):割増率25%以上

これらの割増賃金は、固定残業代とは別に支給する義務があります。「固定残業代に含まれる」と契約書に書かれていても、無効と判断される場合が多いため注意が必要です。

役職手当との違い

「役職手当」は、役職に伴う責任・マネジメント業務への対価であり、残業代とは別物です。ただし、「役職者だから残業代なし」という運用は法律上認められません。管理監督者(店舗責任者など)の範囲に該当しない限り、役職手当があっても残業代は必要です。

業務手当、職務手当との関係

業務手当・職務手当の中に「実質的な残業代」が含まれている場合、それが固定残業代として扱われるケースがあります。ただし、その場合も「時間数・金額・内訳」を明記していなければ違法となるため、名目だけで「残業代込み」とするのは非常に危険です。

トラブルの対応方法

みなし残業の未払い・違法運用が疑われる場合、従業員は次の手順で対応できます。

未払い残業代の請求方法

  1. タイムカード・勤怠記録・メール送信履歴などを収集
  2. 未払い分を計算(賃金台帳または平均時給で算出)
  3. 会社に書面または内容証明で請求書を提出

未払い残業代の時効は3年(2020年4月改正以降) です。証拠をもとに冷静に請求すれば、話し合いで解決するケースも少なくありません。

労働基準監督署への相談方法

会社に直接請求しても支払われない場合は、労働基準監督署(労基署)に相談・申告することができます。

  • 労働基準監督官が企業を調査
  • 未払いが確認されれば「是正勧告」または「指導票」を発行
  • 改善がなければ送検(刑事罰)対象になることもあり得る

相談は無料・匿名でも可能です。

労働審判の流れ

労基署でも解決しない場合、労働審判制度を利用することができます。これは裁判所が関与し、原則3回以内の審理で解決を目指す手続きです。流れは以下の通りです。

  1. 労働審判の申立て(管轄地の地方裁判所)
  2. 裁判官と労使経験者(審判員)による審理
  3. 解決勧告・調停・審判決定

多くのケースでは、和解または支払い命令で終結します。

弁護士相談のメリット

弁護士に相談することで、次のような利点があります。

  • 証拠整理・請求書作成を代行してもらえる
  • 法的根拠に基づいた請求ができる
  • 時効中断・和解交渉などを有利に進められる
  • 精神的なストレスを軽減できる

また、未払い残業請求の成功報酬制(着手金0円)を採用している法律事務所も多く、初期費用なしで相談できる場合もあります。

就業規則・雇用契約書で確認すべきポイント

みなし残業(固定残業代)制度を導入している企業では、就業規則や雇用契約書の記載内容が非常に重要です。書面上の説明が曖昧だと、後に「未払い残業」や「違法運用」のトラブルにつながることがあります。

確認すべき主なポイントは以下の3つです。

  1. 固定残業代の金額と対応する時間数
    → 例:「月給30万円(うち固定残業代5万円/30時間分を含む)」など明記されているか。
  2. 超過分の残業代支給についての記載
    → 想定時間を超えた分を「別途支給する」と明示されているか。
  3. みなし残業代を含む基本給との内訳が明確か
    → 「基本給+固定残業代+手当」の構成になっているか確認。

これらが契約書に明確に書かれていない場合、企業側の説明責任が問われる可能性があります。

雇用契約書に記載されるみなし残業例

雇用契約書で適切に記載されている例は以下の通りです。

【記載例】

月給300,000円(基本給250,000円+固定残業代50,000円を含む)

固定残業代は30時間分の時間外労働に対する手当として支給する。

30時間を超える時間外労働については、別途法定割増率に基づき支給する。

このように、

  • 金額
  • 時間数
  • 超過時の支給方針

の3点を明確にすることが法律上の条件です。逆に「月給30万円(残業代込み)」というような表記は、みなし残業として無効と判断される可能性が高いため注意が必要です。

固定残業代就業規則の記載例

就業規則においても、固定残業代制度を採用する場合は、下記のように明記する必要があります。

【記載例】

第○条(固定残業代の取扱い)

1.本会社は、職務の性質上、時間外労働が発生する可能性がある職種について、固定残業代を支給する。

2.固定残業代は、毎月支給される給与のうちに含まれ、その金額は職種・等級ごとに別途定める。

3.固定残業代に含まれる残業時間を超えた労働が発生した場合は、超過分の残業手当を別途支給する。

4.固定残業代は、深夜勤務・休日勤務の割増手当を含まない。

このように、「対象職種」「超過分の支給」「深夜・休日割増の除外」を明示することで、労働基準法第37条を遵守した適正な運用になります。

基本給が低く設定される「みなし残業・固定残業」給与明細の見方

みなし残業制度を導入している給与明細では、しばしば基本給が低く見えるケースがあります。たとえば次のような明細です。

項目

金額

基本給

200,000円

固定残業代(30時間分)

60,000円

職務手当

20,000円

合計支給額

280,000円

一見すると「基本給が安い」と感じるかもしれませんが、これは残業代の一部をあらかじめ含めているためです。

ただし注意すべきは、退職金・賞与・昇給の計算基礎が“基本給”である場合が多いという点です。結果的に、みなし残業制は「月給が高く見えても、生涯年収で不利」になることがあります。

みなし残業を廃止した場合の給与減少問題

企業が「働き方改革」や「残業削減」を目的にみなし残業を廃止すると、その分の固定残業代がなくなり、給与が減少することがあります。

たとえば、月給30万円(うち固定残業代5万円含む)の社員が、みなし残業廃止後に「残業ゼロ」になると、月給25万円+実残業代支給(残業ゼロなら25万円)となり、見かけ上の給与が5万円下がることになります。

そのため、企業は制度変更時に以下を明示する必要があります。

  • 基本給・手当構成を変更する理由
  • 労働条件の不利益変更に該当しない根拠
  • 残業削減による総収入の影響説明

説明が不足すると「減給トラブル」に発展することもあるため、就業規則の改定手続きと労使合意が欠かせません。

「残業代込みの給料」表示の落とし穴

求人票などでよく見かける「残業代込みの給与」は、法律上きわめてグレーまたは違法リスクが高い表現です。

たとえば「月給30万円(残業代込み)」としか書かれていない場合、

  • 何時間分の残業が含まれているのか
  • どの金額部分が残業代なのか
  • 超過分は支払われるのか

が不明確であり、労働基準法第37条違反に該当するおそれがあります。

正しい求人表記は、月給30万円(うち固定残業代5万円/30時間分を含む)、超過分は別途支給といった形式です。求職者は、求人票・契約書の両方で時間数・金額・超過支給条件を確認することが大切です。

休憩時間が取れなかった場合はどうなる?

労働基準法第34条では、6時間を超える労働で45分以上、8時間を超える労働で1時間以上の休憩が義務づけられています。休憩を取れなかった場合、その時間は「実労働時間」として扱われ、残業時間に含めて計算しなければなりません。

つまり、みなし残業制を導入していても、休憩が取れなかった時間分は「追加の残業」として扱われる可能性があります。

企業側が休憩を取らせなかった場合は、安全配慮義務違反や労基法違反として指摘されることもあるため、勤務シフト・業務指示の設計には注意が必要です。

業界別・職種別のみなし残業の特徴

みなし残業(固定残業代)制度は、業界や職種の働き方・成果の評価方法によって導入目的が異なります。長時間労働を前提とするのではなく、「業務の性質に応じた柔軟な給与設計」として採用されているケースが多い一方、一部の業界では制度の誤用がトラブルの原因となることもあります。ここでは代表的な3パターン、IT業界/営業職/専門職の特徴を紹介します。

IT業界での運用例

IT業界(システム開発・Web制作・エンジニア職など)では、プロジェクト単位での業務負荷が変動するため、みなし残業制が広く採用されています。

特徴

  • プロジェクトごとに繁忙期と閑散期が明確で、残業時間に波がある
  • 裁量労働制と併用されるケースもあり、成果ベースの働き方を重視
  • 在宅勤務・リモート環境が進む中、勤怠管理の「みなし化」が進行

メリット

  • エンジニア・デザイナーにとって、時間よりも成果を評価されやすい
  • 企業側は「残業込み月給」で給与予算を安定化できる

デメリット・注意点

  • 実際の労働時間がみなし時間を大幅に超える「納期前残業」が起きやすい
  • 固定残業代の時間数を曖昧に設定している求人も多く、法的リスクあり
  • 裁量労働制と混同し、「残業代が一切出ない」と誤解されることもある

IT業界の「みなし残業」は本来“柔軟な働き方”を支える制度ですが、客観的な勤怠記録(打刻・タスクログ)が取れない環境では違法リスクが高いため注意が必要です。

営業職での運用例

営業職は、外回りや顧客訪問などの「労働時間の把握が難しい職種」として、もっともみなし残業が導入されやすい分野です。特に、個人営業・法人営業・インサイドセールスなどで広く見られます。

特徴

  • 外出や移動が多く、勤怠打刻ができない時間が発生しやすい
  • 成果給(インセンティブ)との併用が一般的
  • 「月給+歩合+みなし残業手当」という給与構成が多い

メリット

  • 残業申請の手間を減らし、営業活動に集中できる
  • 固定給が安定するため、インセンティブがない月でも生活水準を維持できる
  • 経営側もコスト予測を立てやすい

デメリット・注意点

  • 実際の勤務時間を正確に記録しづらく、超過残業が発生しても証明が難しい
  • みなし残業を理由に「成果を出せない社員の長時間労働」が放置されるケースも
  • 「営業職=残業込みが当然」という業界文化が残る企業ではブラック化の温床になる

営業職でのみなし残業は、「成果を上げるまで働ける自由」と「過剰労働のリスク」が表裏一体です。勤怠アプリ・GPS打刻などの導入が、健全な制度運用に不可欠です。

専門職での運用例

専門職(コンサルタント・デザイナー・会計士・医療従事者など)の場合、成果や専門スキルに対して報酬を支払う性質が強く、時間管理より成果管理が重視されます。

特徴

  • プロジェクト単位や案件単価制の働き方が多い
  • 一人あたりの裁量が大きく、「何時間働いたか」より「何を成し遂げたか」で評価される
  • コンサル業界・士業事務所・制作会社などで固定残業代制が多い

メリット

  • 給与の安定化と成果給の両立ができる
  • 高スキル人材にとって、自律的な働き方の自由度が高い
  • 企業側も専門人材コストを事前に計算しやすい

デメリット・注意点

  • 「専門職=裁量がある」という理由で、長時間労働を黙認しやすい
  • 残業代を支払わない根拠として「職務手当」などが乱用されるケースも
  • 実際には時間管理義務があるのに「みなし労働だから」と軽視される危険

専門職におけるみなし残業は、“成果主義の名を借りた固定残業化”に陥りやすい制度です。企業は「職務手当」「専門手当」の範囲を明確にし、従業員側も「超過分の支払い条件」を契約書で必ず確認すべきだと言えます。

みなし残業制度と正しく向き合うために

みなし残業・固定残業制度は、働き方の多様化を支える一方で、誤った運用が労使トラブルの火種となる制度でもあります。制度自体が「悪い」のではなく、双方が内容を正しく理解し、透明性を保つことが何より大切です。

  • 固定残業代の金額・時間数・超過分の支給方法が明示されているか
  • 休日出勤・深夜残業が別途支給対象になっているか
  • 勤怠管理・タイムカードなどの客観的記録が残っているか

これらをまずは、契約書や就業規則の中でひとつずつ確認することが、労使間の信頼関係を守る第一歩になります。

また、万が一「残業代が支払われていない」「制度が曖昧で不安」と感じた場合は、労働基準監督署や専門機関に早めに相談することをおすすめします。曖昧なまま働き続けることは、あなた自身にも企業にもリスクを残してしまいます。

株式会社ヴィジョナリーでは、企業の就業規則・雇用契約書の整備から、みなし残業制度の適正化、労務トラブル防止のための社内運用アドバイスまで、専門的なコンサルティング支援を行っています。

制度の見直しや表現修正、社内ルールの策定にお悩みの方は、ぜひ一度、株式会社ヴィジョナリーまでご相談ください。

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